オールドレンズ 「Leica Elmer 50mm f/3.5」分解・オーバーホールクリーニング工程

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1925年に登場以降、愛され続けるレンズ「Leica (Leitz)  Elmer 50mm f/3.5」。
市場に出回るこのレンズには、経年によるレンズの白濁や、絞り羽根の油染み、距離環のグリス切れなど、メンテナンスが必要なものが多数存在します。
絞り羽根の油は動作不良を引き起こし、レンズの曇りは写真の仕上がりに影響します。距離環は程よいトルクで回転することが望ましく、正しい状態では微調節もしやすくなります。
このような状態のレンズは、オーバーホールにより本来の性能を取り戻すことが可能です。
この記事では、Elmer 50mm f/3.5 のオーバーホールにおける、下記5つの過程をご覧いただけます。
  1. 状態確認
  2. 絞り羽根一枚にわたるまで完全分解
  3. 洗浄によるオーバーホールの実施
  4. 組み立て工程
  5. オーバーホール完了

それでは、熟練の職人によるオーバーホール過程をじっくりとご覧ください。

1. オーバーホール前の状態確認

 ▼今回オーバーホールを実施するレンズ Elmer 50mm f/3.5 です。

 

▼絞り羽根を拡大すると、油が浮いているのを確認できます。

 

この写真ではわかりませんが、レンズが曇った状態となっています。

後述の洗浄工程でお見せしますが、中玉、後玉は特に白濁した状態です。

また、この Elmer は、距離環も小さな力で回転してしまう状態になっているので、こちらもメンテナンスが必要となります。

これらの経年による劣化を改善するため、一度全て分解してオーバーホールを施します。

 

2. 分解工程

①鏡胴とレンズユニットの分離

▼まずは鏡胴背面の遮光板リングを抜き取ります。

人差し指を内壁に沿って差し込み、凸部を引き抜きます。

 

 ▼次に、特注の専用工具を用いて、レンズユニットの固定リングを取り外します。

上の画像右下にあるのが最初の手順で引き抜いた遮光板リングです。

 

▼固定リングを取り外しました。

リングには切り欠きがあり、ここに工具の先端を引っ掛けて回すと取り外すことができます。

 

▼レンズユニットを取り出すため分解を続けます。

フロントパネルを取り外すには、横にある極小のネジを回す必要があります。

 

▼取り外したとても小さなネジです。

このネジはうっかり落としてしまうと探し出すのが困難なので、注意を払いながら作業します。

 

▼鏡胴の横にも極小のイモネジがあり、こちらも取り外す必要があります。

 

▼ネジが外れているのがおわかりいただけるでしょうか。

 

▼ネジを全て取り外せたので、フロントパネルを外します。

フロントパネルは滑り止めと保護の目的で、三角形のゴム管を被せて取り外しています。

 

▼フロントパネル取り外し完了です。レンズユニットが顔を見せました。

 

▼レンズユニットを指でつまんで、優しく引き抜きます。

これで、鏡胴とレンズユニットの分離は完了しました。

続いて、レンズユニットを分解します。 

②レンズユニットの分解

▼取り出したレンズユニットです。洗浄するため、分解します。

 

▼作業風景。レンズは左側にあるリングレンチで分解します。

 

▼レンズユニットを前玉、後玉群に分離します。

リングレンチはφ22とφ25を用い、反時計回りで緩めていきます。

 

▼後玉群を取り外すことができました。

 

▼さらに、後玉と中玉を分離させるため、分解を続けます。

 

▼後玉と中玉を分離させることができました。 

 

▼絞り羽根ユニット、中玉、後玉の状態に分離できています。

 

▼絞り羽根ユニットから前玉を取り出すため、カニ目レンチでOリングを外しました。

カニ目Oリングは反時計回りに回転させると、取り外すことができます。

 

▼Oリングの下には押さえ緩衝材があるので、ピンセットでつまんで外します。

 

▼前玉を外す準備が整ったので、レンズサッカーを使って取り出します。

 

▼これでようやく絞り羽根があらわになりました。

 

▼絞り羽根ユニットは、ここからさらに分解を進めます。

③絞り羽根の分解

▼レンズを取り外した状態になると、絞り羽根の油がよくわかります。

▼絞り羽根は絞りユニット固定リングを外すことで分解できます。

 

▼絞り羽根固定ユニットを分解しました。

こちらもかなり油で汚れています。

 

▼バラバラになった絞り羽根です。洗浄液できれいにしていきます。

3. 洗浄工程

①絞り羽根の洗浄

▼パーツ単位に分解された絞り羽根ユニットを、専用の洗浄液にしばらく漬け込んだ後、超音波洗浄機にかけます。

 

▼絞り羽根は別の容器に入れ替え、入念に洗浄しています。

 

▼2度の洗浄を終えた絞り羽根を、今度は一枚一枚、丁寧に綿棒で清掃。

 

▼入念な洗浄の結果、絞り羽根がきれいになりました!

絞り羽根は、長年による使用によりかなりお疲れの様子でしたが「お疲れ様でした」という気持ちを込めて入念に洗浄した結果、再び元気な姿を見せてくれました。

 

▼絞り羽根の動作をしっかりと支えてくれる固定ユニットもご覧のようにきれいな姿に。

 

▼洗浄液のビフォーアフター。長年蓄積された汚れがどれほどのものかよくわかります。

絞り羽根から油やゴミが取り除かれ、気持ちよく動作してくれそうです。

続いて、白濁した光学レンズを洗浄します。

②光学レンズの洗浄

▼まずは前玉を洗浄しました。

専用のクリーニング剤を用いて、丁寧に綿棒で磨いていきます。

 

▼カビや汚れを除去し、白濁していたレンズが透き通って見えるようになりました。 

 

▼次は後玉です。後玉は曇りが激しいことがよくわかります。 

 

▼後玉の裏面も曇りがとても激しい状態。メンテ必須ですね...。

 

▼前玉と同じように入念に洗浄した後玉。ご覧のように美しいレンズになりました。 

 

▼後玉裏側もご覧のような美しさです。

 

▼最後は中玉を洗浄します。こちらも曇りが目立ちます。

 

▼洗浄後の中玉は輝きを取り戻し、照明がクッキリと反射するようになりました。

③鏡胴部の洗浄

▼鏡胴部も超音波洗浄機にかけるのですが、まずは古いグリスを丁寧に拭き取ります。  

 

▼鏡胴と同じく、Lマウントパーツに付着したグリスも除去します。 

 

▼超音波洗浄機でパーツをきれいに洗浄しました。 

これで絞り羽根、レンズ、鏡胴の全てのパーツが洗浄完了となりました。

半世紀にわたる蓄積された汚れを除去し、美しい姿を取り戻したパーツたちを組み上げていきます。 

4. 組み立て工程

①絞り羽根の組み立て

▼洗浄した絞り羽根を固定ユニットに一枚ずつ組み付けます。

とても小さなパーツなので、神経を使う作業です。

 

▼竹串の先端で位置を微調整。

呼吸をすると手元が狂うほどの細かい作業で、全神経を集中させています。

 

▼うっかり位置が狂うと合わせるのが大変です...。 

 

▼絞り羽根をなんとか位置合わせできたので、パーツを組み付けます。 

 

▼レンズユニットに装着する前に、絞り羽根がきれいに動作するか確認します。 

 

▼完全に絞った状態までスムーズに動作しました。 

油でギトギトだった絞り羽根が、全て綺麗になっていることがよくわかります。

 

▼動作確認ができたところで、 レンズユニットに装着します。

 

▼レンズユニットに組み込み後、絞り羽根の動作が問題ないことを確認しました。

②レンズユニット組み立て

▼中玉と後玉を組み付けた後玉群を、時計回りで絞り羽根ユニットに組み込みます。

 

▼続いて絞り羽根制御環の取り付けです。

 

▼前玉を取り付けます。レンズサッカーで慎重に...。

 

▼前玉が取り付けできたので、押さえ緩衝材の取り付けです。

 

▼そして、前玉固定リングを取り付けます。

 

▼前玉を傷つけないよう、ゴム管を使って慎重に、時計回りで取り付けます。

 

▼最後はカニ目レンチでしっかり締め付けて完了です。

 

▼絞り羽根の油や、レンズの白濁が除去され、美しいレンズユニットが完成しました!

あとは鏡胴にレンズユニットを組み込めば完了ですが、最後に大事なメンテナンスが残っています。

③鏡胴にレンズユニットを組み込む

▼鏡胴部の組み立てです。溝には満遍なくヘリコイドグリスを塗布します。

 

▼マウント側にもヘリコイドグリスを塗布しています。 

 

▼組み付け時は位置を間違うと無限遠が合致しないので、注意が必要です。

慣れないうちは、分解前に罫書きしておくといいでしょう。

 

▼無限遠ロックの位置が完全に一致しています。 

 

▼鏡胴ユニットにレンズユニットを組み込みます。 

鏡胴部のネジ穴と、レンズユニット側のネジ穴の位置を合わせるように挿入します。

 

▼ネジ穴が一致したので、押さえて固定します。 

 

▼レンズユニットが動かないよう、押さえながらフロントパネルの取り付けます。 

フロントパネルもネジ穴が合うよう締め込みます。

 

▼レンズユニットを固定するには、極小のイモネジと格闘しなければなりません。

 

▼落とさないようにピンセットで慎重に作業します。 

 

 ▼精密ドライバーで締め込み、レンズユニットが固定されました。

 

▼同様に、極小のネジでフロントパネルを固定。

小さなイモネジとの戦いはこれにて完了です。

ここまで来たらあともう少し!

 

▼最後は一番最初に取り外した固定リングの取り付けです。 

 

▼専用工具に再び登場してもらいました。 

通常のカニ目レンチで回せればいいんですが、隙間がとても細く狭いので、このような工具が必要になってしまいます。

 

▼最後は遮光板リングを差し込みます。 

 

▼ついに全てのパーツが組み終わりました! 

5. オーバーホール完了

▼以上の工程を経て、くたびれていたElmer 50mm f/3.5は、美しい姿を取り戻しました。

 

絞り羽根の油は除去され、白濁したレンズは透き通っています。

ヘリコイドグリスが塗布された距離環はとても気持ちのいいフィーリングとなりました。

長年の働き、お疲れ様でした。

そして輝きを取り戻したレンズに、これからの活躍も期待しています!

これからこのレンズは、オーナーに素晴らしい体験をもたらすことでしょう。

 

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